26時のメトロポリス

テレビやレディオのお話

深夜ラジオパーソナリティはM-1 2019をどう見ていたか?

M-1グランプリ2019が終わってからの一週間、深夜ラジオのパーソナリティからは出場者に対する称賛の言葉が相次いだ。圧倒的な漫才の腕力で文句なしの優勝を果たしたミルクボーイや、新しい漫才の形を見せたぺこぱを称えるコメントが多い中、ニューヨークについて時間を取って話すパーソナリティも多かったように思う。印象的だった番組をいくつか挙げていきたい。

 

東京ポッド許可局では、からし蓮根へのコメントの最中に突然和牛を叩きだした上沼恵美子についての話に。タツオの「あんなの和牛に対する愛情じゃん」という発言に他の二人も同意し、PKは「あれを本気にとらえる人は漫才見ないほうがいいと思う」と、お笑いリテラシー弱者を一刀両断。これは言う人が言う人だったらものすごい炎上案件だとも思えるが、これをさらりと言ってのけるPK氏にわたしは男の気概を見た。

 

おぎやはぎは全編にわたってニューヨークをボロカスに叩きまくっていた。「コントはすごい面白いのにな」「コントが100点とすると漫才は30点」といった発言や、放送中に何かを褒めたあと「それにひきかえニューヨークはよぉ」と言うくだりを定番化して乱発したりと、こんなに愛のある叩きはないというくらい慈愛に満ちた叩きであった(いやほんとに)。その放送をリアルタイムで聴いていた屋敷がツイッターで反応し、最終的には嶋佐を引き連れてスタジオに登場。パーソナリティに直に抗議する始末であった。この一連の流れのすべてがいとおしかった。

 

三四郎相田は、ニューヨークのファーストラウンド敗退決定時のやりとり「二度と笑うんじゃねえぞ!」で腹を抱えて笑ったという。するとリスナーメールで「あのやりとりが本気だと思った視聴者がネットに悪口を書き込んだりしてまあまあ炎上していた」との一報が。そこから「これを本気にとらえる人って、漫才を見て楽しめてるの?」という、くしくも東京ポッドと似たような話になるが、相田は「そんな人を目の当たりにしたら、それも込みで笑っちゃう」と、ゲラの素養を見せつける。その後小宮はニューヨークのANN0が一年で打ち切られたことをいじりはじめ、「俺らはラジオ結構続いてるもんね。漫才とラジオの才能は違うんだねぇ~」などと露骨なマウントを取り始めるのだった。

 

M-1面白かった!と手放しに称賛するパーソナリティが多い中、番組制作陣に対してガチ苦言を呈したのが粗品であった。彼は「ネタ前の煽りVでネタバレしている。フェアではない」という。「『ボケ』『ツッコミ』って出るでしょう。その時点でぺこぱさんは不利。俺は松陰寺さんがあの見た目でツッコミなんやというところでまず1つ笑いたかった」「『ツッコミかた改革』というキャッチコピー、ネタを見る前に芸風を言い過ぎてる」「ネタ中に『働き方改革』というフレーズがあるのに、別のキャッチコピーにできなかったのか」と、わたしのような三流視聴者が全く気付きもしない大会の不備を挙げていく。中でも粗品が一番キレていたのが、煽りVの中に出てくる若い頃の写真である。「1年かけた、人生かけた4分の勝負ネタの前にあんな写真出すな。ネタのことをバカにしすぎや」。わかっていたことだが、改めて粗品が漫才のネタを心血全てを注いで作っていることがわかる一幕であった。